今回は半導体製造工場で働いた経験についてお伝えしていきます。あくまでも私のケースです。業界全体がそうと断定するわけではありません。
私が働いたのは半導体製造工場です。自動車会社系の案件に負けないくらい多くの案件が見つかる半導体製造。その派遣工として働いたリアルな声を残しておきます。
半導体製造工場 案件は多いけど実は千差万別
まず前提の話で、「半導体製造工場」の話からさせてください。
半導体製造工場は大きく2つに分類されます。「前工程」と「後工程」です。


この前工程か後工程かで、対応する仕事は全く異なります。今回は後工程の話になります。
また、その用途も様々です。ICチップのイメージからパソコン向けが真っ先に思い浮かびますが、自動車用途などの車載品、医療機器、パチスロから家電まで、様々な用途があり、用途や環境によってICチップの仕様も大きく変わってきます。
当然需要も変わってきます。最近では生成AIでデータサーバー向けの需要が高く、その製品を作る工場はフル稼働状態ですが、車載品向けは中国市場をはじめとした需要後退で閑散期に入っていると聞いています。
基本的な仕事のスタイル 化粧や制汗剤もアウト

仕事は完全なクリーンルーム内での作業です。ホコリやゴミの発生は絶対にNGなので、基本的には完全防備、防塵マスクにクリーンスーツ、ゴム手袋での作業です。
半導体は前工程に近いほど清潔な環境維持が重要です。チップ製造の段階でゴミが付着するとNG品になるためです。問題はこの「ゴミ」の大きさですが、目に見えないサイズのゴミでもNGになります。例えば皮脂は言うまでもなく、花粉や化粧品のパウダーですらNGです。
そのため、「化粧や香水をつけての勤務はNG」ということ。整髪料や制汗剤もNGです。前髪が帽子から少し出ていても注意されるような環境です。
また、メモ帳やボールペンもクリーンルーム専用のものを使います。自前で用意することは絶対にNG。後述になりますが、覚えることが多く、メモの量も多いです。メモ帳は小さいものだったので、都度もらいに行くのが手間でした。
またクリーンスーツに着替えるのも時間がかかるし、エアーシャワーを浴びるので、着替えて職場に戻るまでに5分10分かかる場合もあります。トイレに行きたくなる時は少し大変でしたね。
一番つらかったのは手袋
私の場合、一番つらかったのは実は手袋です。ゴム手袋、具体的にはニトリル手袋といって、汗を通さない手袋が絶対必須でした。
汗を通さないので基本的に蒸れます。お風呂上りの手でずっと作業するようなもので、爪が柔らかくなるため、すぐに割れます。また、常に手が蒸れていることから生じるあかぎれと手湿疹に悩まされ続けました。爪は割れるし、手は全体がすごく痒い。でも代替品がないのでどうしようもありませんでした。
聞くところによると職業病のようなもので、これが辛くて辞める人もいるようです。
同志のために解決法を置いておきます

私が手荒れで一番重宝したと感じたのは防水タイプの絆創膏「ケアリーヴ」です。サイズが複数あって使いやすいのと、何より目立ちません。剝がれにくさも助かりました。ドラッグストアにあると思うので探してみてください。ただ、お値段は少々かかります。
かゆみ止めの軟膏は人それぞれかと思うので紹介は控えておきますが、使わないより使ったほうが絶対に良かったと感じています。できれば皮膚科に通うと良いと思います。
仕事は覚えるのがとても大変
私は自分で言うのもなんですが、覚えるのは得意。そんな私が断言します。覚えるまではマジで大変です。覚えてからも追われ続ける大変さが待っています。
youtubeにアップロードされている動画の1シーンを参照しますが、後工程の職場環境としては、まさにこんな環境です。

機械が大量に並んでいて、人はほとんどいません。製造工程・検査工程ともにこうした環境になります。一人または数人で10台から20台程度の機械を担当しています。
部品をセットして、機械を設定して、取り出して次の工程へ。
基本的にはこれだけなのですが、それぞれの機械は微妙に仕様が異なる場合があり、製造品によってメーカーも異なる場合もあります。機械操作の方法が微妙に違う上に、機械によって癖があるので、それらも覚えるとなると、覚えが良い人でもマスターには数か月は平気でかかります。
案件募集に「機械のタッチパネル操作をするだけ」など簡単に書かれているケースが多いですが、覚えるのは非常に大変だということは強く伝えたいと思います。
さらに、1つの機械はセットしてから完成まで30分から長いと半日ほどかかりますが、10台も20台も同時に操作しているので、いつもどこかでエラー音が鳴っています。そうかと思うと数時間何も作業が無いなども良く起こりました。
暇な時間が極端に苦手、仕事に追われるのが苦手な方には不向きな環境下かもしれません。
あと、同じ機械が永遠と並んでいるので、慣れないうちは工場内で頻繁に迷います。
不良流れは絶対に許されない
半導体は1度に大量にICチップを製造します。もちろん会社によりますが、私のいた工場では1ロット数十チップから10000チップ以上など幅広く製造していました。最終的に検査をしてNG品を選別しますが、その後の出荷までの間にも人の手が介在する工程があります。
1万個あるチップで1個途中でリードが曲がるなどあるだけでも、顧客からクレームで返ってきます。そのため不良流れにはとても厳しいチェックが入りました。
これくらいは大丈夫だろう、と考えやすい人はかなり注意が必要な職場だと思ってください。
現場での社員交流はかなり少なめ、かつ不自由
現場で実際に働いてみると、まず機械の稼働音がとてもうるさい。その上でマスクをしていてフードを被っているので喋りづらいし聞き取りづらい。なので社員同士で話していても、聞き返すことが非常に多いし、聞き取り間違いも頻発して話がかみ合わなくなることも日常的に起きていました。
また、会話によってゴミが発生することもあるので、基本的に会話は控えめ。その上機械は多くて人が少ないので、交流そのものも少なめでした。
「分からないことがあればすぐに聞くように」と言われますが、すぐ聞くべき人の姿が見えないということはかなりの頻度で経験しました。
半導体製造工場で働く利点
ここまで書いてきたことの多くが大変な点やデメリットが多いので、メリットを探してみます。
重たいものは持たなくて済みます。
覚えてしまえばほぼ繰り返し作業です。
ホコリを立てることがNGなので体操がない。
クリーンルームなので年中一定温度です。
クリーンルームなので鼻炎が減ります。
3勤3休や4勤2休が多く、平日休みもあって便利だった。
個人的にはこの程度でしょうか。軽作業のわりに派遣だとなかなかお金も貯まらず大変だったなぁという印象が強いというのが正直なところです。



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